2014年11月17日

東洋エンジニアリング株式会社(TOYO、取締役社長 石橋 克基)は、2011年に特許を取得した省エネルギー型蒸留システム「SUPERHIDIC ®」の、商業化プロジェクトを受注しました。丸善石油化学株式会社(千葉県・市原市)のメチルエチルケトン(MEK)製造設備の蒸留塔に適用されます。

一般的に石油精製や石油化学のプラントで用いられている蒸留操作は、蒸留塔の塔底液をリボイラーで加熱すると同時に、塔頂ガスをコンデンサーで冷却する熱エネルギー消費量の多い工程です。蒸留操作の省エネルギー化については旧来より様々な技術が提案され、1970年代に究極の省エネルギー性能を得られるとして、内部熱交換型蒸留塔「HIDiC」のコンセプトが発表されて以降、世界中でHIDiC研究が行われていますが商業化されていませんでした。

TOYOはHIDiCのコンセプトを進化させ、既存の蒸留・伝熱技術を適用することで、通常の蒸留塔のメンテナンス性を維持しつつ、高い経済性を実現する蒸留システムSUPERHIDIC®を開発しました。SUPERHIDIC®は、最適な内部熱交換を行うことにより、多くの蒸留工程で40~60%の省エネルギー化を可能にします。

TOYOは本商業化を契機に、さまざまな蒸留塔へのSUPERHIDIC®の適用拡大を図り、石油精製・石油化学プラントの省エネルギー化に貢献してまいります。

受注概要

客 先 丸善石油化学株式会社
受注者 東洋エンジニアリング株式会社
建設地 千葉県市原市
対象設備 メチルエチルケトン(MEK)製造装置内の蒸留塔
役務内容 SUPERHIDIC®技術の供与及び基本設計業務

一般的な蒸留塔とSUPERHIDIC®の概念図

省エネルギーのイメージ: 一般的な蒸留塔のリボイラーのエネルギー消費量を100として、SUPERHIDIC®の圧縮機は40(一次エネルギー換算後)、リボイラーは10、計50程度となり、約5割の省エネルギーを達成します。

HIDiCとSUPERHIDIC®のコンセプト

HIDiCのコンセプトは、蒸留塔を濃縮部と回収部に分けて、その間に圧縮機を設置し、濃縮部の圧力をわずかに上げることにより温度を上昇させて、濃縮部の熱を回収部に移動させ、リボイラーに供給する熱エネルギーを大幅に削減することで、省エネルギーを図る、というものです。
このHIDiCのコンセプトを具現化する方法として、1990年代に濃縮部と回収部を同心円に配置する構造が提案されましたが、この構造ではメンテナンスが難しいこと、また、熱交換する位置の組合せに自由度がないことと、その熱交換量も単にその位置の温度差で決定されることで、省エネルギー性能に改善の余地を残していました。SUPERHIDIC®は、一般的なスタブドイン型熱交換器を適切に配置することで、最適な塔内の熱分布を実現し、より優れた省エネルギー性能を有します。

※SUPERHIDIC® の装置構成については(独)産業技術総合研究所と共同で特許を取得し、設計方法については京都大学大学院工学研究科長谷部伸治研究室と、共同で研究開発したものです。
※SUPERHIDIC® は、2014年度日経地球環境技術賞優秀賞を受賞しました。

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