タイ国内7か所の発電所建設プロジェクトを同時遂行。世界的にも異例の挑戦。 タイ国内7か所の発電所建設プロジェクトを同時遂行。世界的にも異例の挑戦。

PROJECT05 TSPP-PROJECT
タイ国旗

クライアント:Gulf JP Co.,Ltd.(電源開発)
設備名:熱電併給ガスタービンコンバインドサイクル発電所7ヶ所
設備能力:110MW×6、120KW×1
建設サイト:タイ・バンコク

本プロジェクトは、タイ政府制定のSPP(Small Power Producers)プログラムの一環である。
このプログラムは小規模分散型事業者への奨励を通じて高効率のエネルギー活用を目指すものである。
本プロジェクトはタイ・バンコク周辺7ヶ所で並行してガスコンバインドサイクル発電所の建設を進めるというプロジェクト。
まさに高いプロジェクトマネジメント能力を誇るTOYOならではの案件であり、今後更にインフラ事業に注力していくTOYOの代表的な実績となるだろう。

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『X度目の正直?』で受注。営業には種蒔きが不可欠

 TOYOが2006年度に発表した中期経営計画では、これまでの主力商品であったハイドロカーボン関係のプラント(注1)ハイドロカーボン関係のプラントハイドロカーボン関係のプラント製造される製品の原料が石油・ガスに由来するプラント全般を指す。工程の上流域は油井掘削から始まり、下流に向かうにつれて石油・ガス精製プラント、石油化学基礎製品製造プラント、石油化学誘導品製造プラントと順に広がりを持つ。に加え、インフラ分野(注2)インフラ分野インフラ分野当社のインフラ分野の定義は、水処理、発電、交通システムなどの社会インフラ分野を指す。を事業の柱とすることを目標に掲げた。なかでも発電分野はマーケット規模と安定性から最重点分野と位置付けられ、全社的に力を入れて取り組んできた。2007年に営業に異動した吉原も、インフラ事業部門の発電案件担当として奔走していた。「元々、機械設計エンジニアとしてTOYOでのキャリアをスタートしたが、総合商社へ出向してエネルギー関連の新規事業開拓に携わった経験から、帰任後も案件形成に関わる仕事をやりたいという思いが強まった」と自ら営業への異動を志望し、新規注力分野である発電を担当。「当時は、自分自身はもちろん社内全般にまだ発電EPCビジネスに対する知見もノウハウも不足していて、種々模索しながら業務改革および業態変革に取り組んでいる状態だった」。
 発電所は特に公共性が高いことから、客先にとって信頼性を担保する完工実績がコントラクター選定の重要な指標の1つとなる。そのため新規参入者であるTOYOはなかなか受注が得られないまま3年が経過。「そろそろ結果を出さなければ」と危機感を募らせていた2010年、ついに受注に至ったのが本案件だった。実は、吉原が本案件に関わったのは数年前に遡る。過去、幾度かにわたり客先とコンタクトし、プロポーザルを提出した事も有ったが合意に至らず、一旦ファイルクローズしていた。それが、忘れかけていた頃に客先の方から突如打診が舞い込んできたのだ。「当時の心境はと言えば、客先の事業スケジュールから最大で最後のチャンス!と奮い立った」と吉原は笑う。
 過去に検討したデータがあるとはいえ、1-2ヶ月という短期間でプロポーザル提出から契約交渉、受注までをこなす必要が有り、時間との戦いだったが、客先にとっては長年計画を進めてきたプロジェクトであり、TOYOが解決すべき点は明確となっていた。客先との交渉と並行して、サブコントラクター(注3)サブコントラクターサブコントラクター通称サブコン。顧客との主契約者(プライムコントラクター)であるエンジニアリング会社の下請け業者を指す。文中では現地工事業者を取り上げているが、他にも詳細設計を担当する設計サブコンなどがある。との交渉を工事部門が進め、限られた時間の中で客先の課題を全てクリアし、ついに受注に至ったという。
 「TOYOがインフラ分野への注力を宣言して5年、私自身が営業担当となって4年掛かったが、2010年にはもう一つアゼルバイジャンの大型発電案件も受注。ようやく会社に貢献できた」という吉原。2007年から、発電案件における競争力とプロジェクトを遂行可能な体制を着実に強化するべく、市場ニーズや競合他社の状況を念入りに調査し、業界各社とパートナリングを形成する事によって着実にノウハウを蓄積していった。そして、チャレンジを繰り返したことが今回の結果に繋がった。「案件の目利きが重要であると共に、前広に種蒔きを行っていくことが新規参入者にとって特に重要だと感じている」と、次なる案件を虎視眈々と狙っている。

吉原 淳
営業担当

海外営業統括本部 インフラ事業本部
大学院工学研究科 計画建設学科修了
1995年入社

本プロジェクトにおける担当者の役職・所属はプロジェクト実行当時のものになります。

【注1】ハイドロカーボン関係のプラント
製造される製品の原料が石油・ガスに由来するプラント全般を指す。工程の上流域は油井掘削から始まり、下流に向かうにつれて石油・ガス精製プラント、石油化学基礎製品製造プラント、石油化学誘導品製造プラントと順に広がりを持つ。

【注2】インフラ分野
当社のインフラ分野の定義は、水処理、発電、交通システムなどの社会インフラ分野を指す。

【注3】サブコントラクター
通称サブコン。顧客との主契約者(プライムコントラクター)であるエンジニアリング会社の下請け業者を指す。文中では現地工事業者を取り上げているが、他にも詳細設計を担当する設計サブコンなどがある。

発電所建設ノウハウを次代に伝えることが使命

 エネルギー、化学、石油化学といったハイドロカーボン関連のプラント案件数が圧倒的に多いTOYOだが、実は発電所建設の案件はこれが初めてという訳ではない。過去には何度か手掛けた実績がある。それらのほぼすべてのプロジェクトに関わり、発電所建設のノウハウを持つ存在として本プロジェクトのPMを務めているのが岡崎。一度に7ヶ所の工事現場でプロジェクトを同時に動かす“離れ業”も、こうした岡崎のノウハウと高いマネジメントスキルがあってこその取組みといえる。
 ハイドロカーボン関係のプラントなどと比較するとシンプルな構造の発電所建設においては、知名度や実績という点で、発電所で使用する機器を専門に取り扱っているメーカーが地位を確立している。そのような中で、「当社が発電所分野に食い込んでいくためには、今回のような一度に複数プラントを建設するというプロジェクトマネジメントそのものに難しさがある案件に積極的に取り組み、エンジニアリング会社ならではの実力を示していく必要がある」という岡崎。
 一つひとつの発電所は小規模だがほぼ同時に7ヵ所で並行して工事をすすめるという点でTOYOはもとより業界的にも異例のこと。7つの発電所はコピープラントではなく、エンドユーザーの要求や環境規制により一つひとつがまったく異なるプラントであるといっても過言ではいという。
 7つもの現場が動いていると、節目となる工程やトラブルが次々に起こってくるので息つく暇もない状態。ただ、「以前、上司から『問題がなければPMは必要ない』と言われたとおり、問題を解決するのがPMの仕事」と岡崎は笑う。
 発電所建設の場合、ハイドロカーボン関係のプラントとは違って主機メーカー、設計及び工事サブコン、種々パッケージ・ベンダーがそれぞれの仕事をこなし、TOYOとしてはその各社のコーディネーションとリスク管理が主業務となる。発電事業は多額の銀行融資を受ける公共事業の側面があるため、メーカー、サブコン各社とも実績豊富な有名企業が揃っている。各社はプライドが高く、自社のスコープに関しては完璧に仕事をこなすが、その間をつなぐ機器や、繋いだ先の設備に関しては、一切関知しないというケースも多々あるため、調整には並々ならぬ忍耐と何があっても目標を達成するという強い志が要求される。
 今後、TOYOの経営基盤を支える大きな柱として、また社会にとっても必要不可欠なインフラ設備として発電所関連の案件が増えて行く中で、自らの持つノウハウを次代に伝えることが使命だという岡崎。そのため現地事務所では真ん中に机を据え、仕切りなども設けずに仕事の内容や会話などをすべてオープンにしているという。
 「若手に対してもかなり厳しく接している。今は理解できない部分もあるかもしれないが、いつか『そういうことだったのか』と気づいてくれたらそれでいい」とほほ笑む岡崎の顔には、自信と優しさが溢れていた。

岡崎 真一
プロジェクトマネージャー(PM)

プロジェクト第三本部
大学院工学部 資源工学科修了
1981年入社

本プロジェクトにおける担当者の役職・所属はプロジェクト実行当時のものになります。