オイルメジャー、シェルグループのエチレンプラント建設を成功裡に完遂。TOYOの実力を世に知らしめた一大プロジェクト オイルメジャー、シェルグループのエチレンプラント建設を成功裡に完遂。TOYOの実力を世に知らしめた一大プロジェクト

シンガポール国旗

クライアント:シェル・イースタン・ペトロリウム社
設備名:エチレン製造設備
設備能力:800,000 t/y
建設サイト:シンガポール・ブコム島

欧米型のビジネススタイルを身につけ、エンジニアとしての幅を広げる

 同じく設計担当の滝澤は、スケジュールの遅れを取り戻すために現場入り。プレコミッショニング(注7)プレコミッショニングプレコミッショニングメカニカルコンプリーションのあと、コミッショニングに備えてプラントを構成する単一機器ごと、又は、システム単位ごとに実施される一連の試運転の準備作業を指す。契約によってはメカニカルコンプリーションに向けた準備作業をプレコミッショニングと呼ぶこともある。チームに所属し、作業計画と管理を担当していた。具体的にはフィリピン人の現場監督に指示を出しながらポンプやコンプレッサー等の試運転や検査立会いなどを手掛けた。
 「J/V企業でグローバル社員と仕事をするのが初めてだったにも関わらず、管理する立場にいたことで苦労が絶えなかった」という滝澤。例えば現地スタッフはワーク&ライフバランスを重視するため、どれだけ仕事が残っていても定時になれば帰ってしまう。一方の日本人スタッフは休日返上でなんとかスケジュールの遅れを取り戻そうとする。この両者のバランスを図るのが滝澤の役目だった。
 「文化の違いなので一方的に指示を出しても現場の空気が悪くなるだけ。なぜ、残ってでもやらなければならないかをしっかりと説明し、予定表を作って先々の仕事の流れを伝えるなど、さまざまな工夫によって全員が納得して仕事に取り組めるように腐心した」と当時を振り返る。
 加えて心がけていたのが、シェルに対する綿密な報告だ。特に問題が発生した時にはすぐに報告することが求められた。同プロジェクトの最大の特徴はクライアントとコントラクターが一つのチームであること。問題点などもしっかり共有するというのがプロジェクト開始当初からのシェルの強い要望だった。
「トラブルの発生そのものよりも、起きていることを把握できていない(リスク管理ができていない)ということのほうが彼らにとっては重要な問題だった。『プロブレム(問題が発生すること)はかまわないが、サプライズ(聞いていない)は絶対に困る』ということを事あるごとに言われたのが印象的だった」と言う滝澤。自分の実施する作業の価値をクライアントに説明できるよう、常に意識しながら業務にあたるという欧米型のビジネススタイルが身に付いたという。

滝澤 正規
プロセスエンジニア

プロセスシステム部
応用工学部物質工学科卒
2005年入社

本プロジェクトにおける担当者の役職・所属はプロジェクト実行当時のものになります。

【注7】プレコミッショニング
メカニカルコンプリーションのあと、コミッショニングに備えてプラントを構成する単一機器ごと、又は、システム単位ごとに実施される一連の試運転の準備作業を指す。契約によってはメカニカルコンプリーションに向けた準備作業をプレコミッショニングと呼ぶこともある。

プロジェクト転部早々の大抜擢でPEMとなり、急成長

 同プロジェクトでPEM(注8)PEMPEMProject Engineering Managerの略。社内・外を問わず設計全体を包括的に管理する立場にある。各設計の進捗度合いや、設計部署間の情報の取り合いが正確に行われているかを確認・管理する。を務め上げ、その手腕を買われて、現在引き続いて行われている能力増強プロジェクトの基本設計(FEED)(注9)(FEED)FEEDFront End Engineering Designの略。基本的には詳細設計直前までの基本設計業務を指し、費用の概算、技術的課題の把握も兼ねる。のPMとして活躍中なのが島田だ。入社後11年間配管設計部(現空間エンジニアリング部)に在籍し、プロジェクトに異動後初の仕事が同案件だった。プロジェクトに転部して間もなく、同案件についても参加後数ヶ月という状態でいきなりPEMに任命。「意気込みというよりもプロジェクト未経験者をManagerに任命して大丈夫なのかという不安の方が大きかった」という島田。
悩んだ末に「とにかくやるしかない!」と開き直り、配管エンジニアとしての経験と知識を最大限活かす事が自分の強みだと信じて無我夢中で仕事に取り組んでいった。
 当初は相談する相手や手本となる人物も身近におらず、チームをどうマネジメントして行くのか全くの手さぐり状態。「マネジメントに不可欠な評価の仕方や報告の方法すらも分からない。本や資料も必死で読み漁ったが当然マニュアル通りにはいかない。常に決断を求められるマネジメントの役務と責任に困惑し、右往左往していた」と笑う島田。「まさに自分にとってはターニングポイントになったプロジェクトになった。なんとか乗り越えられたのはまわりのスタッフ支えてくれたお陰であり、本当に感謝している」と振り返る。

島田 卓也
プロジェクトエンジニアリングマネージャー

プロジェクト第二本部
理工学部機械工学科卒
1995年入社

本プロジェクトにおける担当者の役職・所属はプロジェクト実行当時のものになります。

【注8】PEM
Project Engineering Managerの略。社内・外を問わず設計全体を包括的に管理する立場にある。各設計の進捗度合いや、設計部署間の情報の取り合いが正確に行われているかを確認・管理する。

【注9】FEED
Front End Engineering Designの略。基本的には詳細設計直前までの基本設計業務を指し、費用の概算、技術的課題の把握も兼ねる。

 

 SESプロジェクト自体は2010年に完工。オランダ・ルーマス社との初のJ/Vやコスト・レインバース契約という難しい条件が揃うなか、同プロジェクトを大幅な遅れもなく無事に完遂させたことは、関わったメンバーの経験としてはもちろん、TOYOにとっても大きな意義があった。
 今後、同プロジェクトに派生する形でさまざまな案件が立ち上がり、広がっていくことは確実で、すでに現在、同プラントの能力増強プロジェクトがスタートしている。年産80万トンのエチレンプラントの能力を年産110万トンに規模を拡大するといったもの。このプロジェクトにはPMを務める島田のほか、一人前のエンジニアとして成長した瀬尾、滝澤、秋本も島田のもとで奮闘中。TOYOのビジネスは、着々と若い世代に引き継がれている。