オイルメジャー、シェルグループのエチレンプラント建設を成功裡に完遂。TOYOの実力を世に知らしめた一大プロジェクト オイルメジャー、シェルグループのエチレンプラント建設を成功裡に完遂。TOYOの実力を世に知らしめた一大プロジェクト

シンガポール国旗

クライアント:シェル・イースタン・ペトロリウム社
設備名:エチレン製造設備
設備能力:800,000 t/y
建設サイト:シンガポール・ブコム島

コスト・レインバース契約という新しいノウハウを蓄積

 オイルメジャーであるシェルとのネゴで互角以上に渡り合っていた越川。そんな越川とともに交渉の場に赴いていたのが営業担当の野中だった。野中は基本設計の段階からBM(注4)BMBMBusiness Managerの略。PJ遂行時に必要不可欠な事務職作業全般を担当する。現地税務、法務への対応から始まり、宿舎の手配、VISAの管理など業務範囲は多岐に渡る。という立場で関わり、プロポーザル作成にも関わってきた。プロジェクト始動後は営業として同プロジェクト遂行に必要なJ/Vやシンガポール支店の立ち上げ、契約書の整備を担当していた。
 BM当時に腐心していたのは、やはりコスト・レインバース契約という独特の契約モデルだった。欧米に多いコスト・レインバース契約は、コストをきっちりと積算してクライアントに承認を得なければならない。例えば人件費ひとつとっても、TOYOでは他の日本のエンジニアリング会社同様、一人の社員が複数のプロジェクトを兼務で携わっていることが多く、また福利厚生費や設備費などを含めると人件費を厳密に算出するのは難しい。
 「不慣れな契約形態にTOYOを馴染ませるのは大変でしたが、今回の経験でコスト・レインバース契約に対応するためのスキームができたことで、その後同じような契約形態での受注が続いている。今後、シェルや他の欧米企業との仕事を増やしていくうえでとてもいい経験になった」と言う野中。
営業に異動後も引き続きこの案件を担当。営業として扱う初の案件がいきなりの大型プロジェクトとなったが、「これだけ大きな金、人、モノを扱える営業の仕事はそうあるものではない。複雑な交渉などは難しいと感じるが、それ以上のやりがいがある仕事」と話しており、同プロジェクトで得た経験を生かしながら現在は中東・アフリカ営業グループでイラクやサブサハラなどの営業プロポーザル業務に意欲的に取り組んでいる。

野中 泰助
営業担当

中東・アフリカ営業グループ
商学部卒
2002年入社

本プロジェクトにおける担当者の役職・所属はプロジェクト実行当時のものになります。

【注4】BM
Business Managerの略。PJ遂行時に必要不可欠な事務職作業全般を担当する。現地税務、法務への対応から始まり、宿舎の手配、VISAの管理など業務範囲は多岐に渡る。

女性エンジニアとして活躍できる道を見出す

 各プロジェクトでは新人研修として若手社員が派遣される。同プロジェクトはオイルメジャーと仕事をする貴重な機会として特に多くの新人が派遣されたが、その中で最年少だったのが工事部の秋本だった。入社後わずか半年。最初は工事管理業務としてコンプレッサー立ち上げを担当していた。「いきなり5台のコンプレッサーの立ち上げに関わる仕事を担当するなど、現場では若手であっても希少な戦力として責任のある仕事を任せてもらえる。苦労して設置したコンプレッサーが初めて動いているのを見た時には本当に嬉しかった」という新人ならではの初々しい感動もさることながら、「現場では自分から行動しない限り誰も何もやってくれない。分からないことをそのままにすることがプロジェクトの遅延の原因にもなるので、積極性が大切だと痛感した」という。
 加えて、秋本にとっては現地で会った他社の女性エンジニアの姿が一番の収穫になったようだ。
 「当時、工事部で女性は私一人。でも海外の現場では女性のエンジニアも多く、管理職として活躍している人も多い。特に印象的だったのはサブコンの女性マネージャー。性別を意識させない働きを見せていた。今後の可能性という意味でいいお手本を見ることができた」と話している。

秋本 嗣美
工事エンジニア

工事計画グループ
大学院工学研究科修了 土木工学専攻
2009年入社

本プロジェクトにおける担当者の役職・所属はプロジェクト実行当時のものになります。

初の海外プロジェクトにおいてゼロベースで思考する姿勢を会得

 同じく初の海外プロジェクトとして参画し、「大きく成長できた」と振り返るのが設計担当の瀬尾。J/Vオフィスへの出向となり、オランダのルーマス社で基本設計に携わったり、TOYO-Indiaでスケジュールコントロールなどのマネジメントを行ったりしたほか、FE(注5)FEFEField Engineerの略。現場における工事管理業務を担当。設計図面と施工の照合から始まり、現場の様々な問題を解決する役割を担う。PE(注6)PEPEProject Engineerの略。プロジェクトが円滑に進行するよう、設計・調達・工事全域に渡りマネジメントする。など、状況に応じてさまざまな仕事をこなしていった。
 「オランダで基本設計に携わっていた時には、会社が違えばこうも違うのかと驚くほど設計に対する考え方が異なり、すり合わせに苦労した」という瀬尾。ルーマス社側の担当は50代の大ベテラン。しかし、3年目の瀬尾は一歩も引かなかったという。
 「知識、経験、能力すべてにおいて役割を全うするレベルに達していなかったのは明らかで、精神的にはかなり厳しいものがあった」という瀬尾。しかし、この環境だからこそ大きな成長が可能なはずだと確信し、妥協することなく自分が思ったことはしっかり伝え、学ぶべきところは徹底的に吸収してやろうという意気込みで臨んでいたという。
 「思えばまだ3年目で、TOYOのやり方に染まる前の何も分からない状態で現場に飛び込み、4年間さまざまな経験を積めたことが貴重な経験になった」と振り返る瀬尾。今のTOYOが強みとする部分や、逆にこれからの課題として伸ばしていくべき点などを冷静に判断できる視点が身に付いたほか、新しいやり方、考え方に触れた時にもゼロベース、ファクトベースで思考する姿勢を会得。リードエンジニアとなった今に生かされているという。

瀬尾 範章
配管エンジニア

空間エンジニアリング部
機械工学部機械工学科卒
2004年入社

本プロジェクトにおける担当者の役職・所属はプロジェクト実行当時のものになります。

【注5】FE
Field Engineerの略。現場における工事管理業務を担当。設計図面と施工の照合から始まり、現場の様々な問題を解決する役割を担う。

【注6】PE
Project Engineerの略。プロジェクトが円滑に進行するよう、設計・調達・工事全域に渡りマネジメントする。